スピリチュアル界隈では、今まで科学の物質世界とは相反する精神世界のものとして語られてきた引き寄せ法則や波動といったものが、科学の『量子論』で説明できるのではないか?と実しやかに囁かれています。
量子力学の世界は科学や数学の世界で実際に証明されているのですが、そちらはかなり高度な専門知識を要しますので、そういった数学的知識を省き、科学や物理学の知識がないけれども、スピリチュアルの深淵を覗きたい、という方に向けてできる限りわかりやすく解説していきます。
学術的なものが読みたい方や専門的な知識を深めたい方は下記の書籍がオススメです。
もくじ
量子論の基礎知識
まず、『量子論』は科学における『物理学』の分野にあてはまります。
物理学は大きく分けて『古典力学』と『量子力学』に分かれる
物理学は大きく分けて
- 古典力学(マクロの世界)
- 量子力学(ミクロの世界)
の2つに分かれます。
また『マクロの世界』は『ミクロの世界の集まり』です。
古典力学
小学生の時に習った
- 慣性の法則
- 運動の法則
- 作用・反作用の法則
などが『古典力学』に分類されます。
量子論が発見される以前の物理学の基本的な考え方です。
また、量子論は未だに解釈問題に明確な結論が出ていない分野なため、量子力学は義務教育の中ではほぼ触れられず、科学の世界に関わっていない人は一般的に量子論以前の『古典力学』を信じている場合が多いです。
そのため『Aが起これば必ずBという結果が出る』という『古典力学の法則』を『世界全体の法則』と思い込んでいることも少なくありません。
量子力学
量子とは、原子、電子、中性子、陽子、クォーク、ニュートリノなどそれ以上小さく分けられないエネルギーの塊の単位です。
量子力学は
- 波と粒子の二面性
- 状態の共存
といった原理を持つ現代物理学の核心です。
言葉通り、『目に見えない世界(ミクロの世界)の法則』なので、私達には関係のない世界だと思ってしまいがちですが、量子力学は
- コンピューター
- スマートフォン
- DVD
- 電子レンジ
といった私達に身近なものに使われています。
(半導体の原理が量子論の上に成り立っている)
また、現在の科学者の大半が『量子論』を受け入れています。
(この後解説する解釈問題はありますが)
人はどうしても自分の目で見ていないものを信じられないという特性を持っていますが、ちょっと考えてみると、自分のスマートフォンと友達のスマートフォンが直接コードで繋がれているわけでもないのに、メールのやり取りが一瞬できてしまうのは不思議ですよね。
手紙を人が走って届けていた時代の人に『メール』の概念を伝えても
と言われてもしまうのは想像に難くありません。
私たちの現代科学では『魔法のステッキ』は信じられない人が大半だと思いますが、昔の人にとっての『一瞬で相手にメッセージが送れるもの(メール)』も『空飛ぶ鉄の塊(飛行機)』も信じられるものではないのです。
それと同じで、量子力学の世界は目に見えないの物理学の研究やそれを使う分野の仕事に関わっていないと『空想の世界』や量子力学そのものが『ただのスピリチュアル』と思われてしまいがちですが、私達は実際に量子力学の世界で生きています。
古典力学と量子力学の示す世界の違い
古典力学と量子力学の示す世界像には明確な違いがあります。
古典力学が示す世界
量子力学が示す世界
私たちは画一教育によって『古典力学』を信じてしまいがちだが…?
現代物理科学の最先端の考え方は『超ひも理論(超弦理論)』と呼ばれる量子力学と古典力学を融合させた理論です。
この超ひも理論の中の一説として『別の宇宙の存在』が予言されているのですが、私たちは感覚的に『確定的な法則』と『目に見えるもの(観測できるもの)がすべて』という『古典力学』を信じてしまいがちです。
ですが、義務教育などで習った古典力学は、突き詰めると『ラプラスの悪魔』を信じることに繋がります。
ラプラスの悪魔とは、この世にとてつもない知性が存在していて、宇宙のあらゆる物体の状態を知ることができるとすれば、この知性は、過去から未来まですべてを予言できるという『神の存在』や『運命はすべて決まっている』といった状態を匂わす考え方です。
科学とスピリチュアルは相容れないものだと考えがちですが、私たちが『科学的思考』とみなすものが、『絶対的な神』を予言するのですから、驚きです。
そして、このラプラスの悪魔は占いで言えば『四柱推命』や『西洋占星術』に代表される『命術(生年月日を使った占術)』に通ずるところがあります。
生まれた瞬間のことが分かれば、その人の人生すべてを読み解ける。
これこそ、小さなラプラスの悪魔と呼べるでしょう。
しかし、現代に生きる私たちは、
と思っている方が大半だと思います。
つまり古典力学が予言するラプラスの悪魔を否定し、「未来は決定していない」と考えている。
その解釈を科学的に証明しようと思った時、量子論が提唱する『多世界解釈』が成り立ちます。
量子論における『多世界解釈』とは
多世界解釈は、
- Aを選んだ未来
- Bを選んだ未来
といった形で『未来が枝分かれしていて、どちらの未来もあり得た(他の世界でそれらが実現されている)』という考え方です。
言ってみれば、
- Aを選んだ私
- Bを選んだ私
は別の次元にそれぞれ存在している、というSFさながらの考え方なのですが、これがスピリチュアルではなく『最先端物理学』なのです。
量子力学の考え方はなぜ成立したのか
量子力学は、私たちの考える『科学』とは毛色が違い『自然の本質は曖昧であり、Aが起こる可能性もあればBが起こる可能性もある』という文字通り『曖昧』さを持っています。
この考えが成立しているのは摩訶不思議な実験結果があるからです。
古典力学では、世界は
- 空間内のある一点に位置していて、それ以外のどこにもない『点』
- あらゆる場所に位置する『波』
の二つでできていると考えられており、すべては『点』か『波』だったのです。
そして、この二つは『どちらか』でしかなく、点であり、波である、というわけがありませんでした。
しかし、『光』は
- 『回折』などの現象を考えると『波』
- 『光電効果』などを考えると『粒子(点)』
という『二面性(二重性)』を持っていたのです。
これは、古典物理学の世界では説明できない現象です。
そのため、物理学の世界では
という意見が優勢になったかと思えば
と光は波、という解釈が一般的になり、しばらくすると
とまた粒派が優勢になったかと思いきや
と、二転三転し続けていました。
これに対して、明確な答えを出したのが『量子論』における『波と粒子の二面性』という考えでした。
そしてこの現象は光だけではなく、他の粒子にも見ることができる現象でした。
(量子論が誕生する前の物理学の世界では、光の謎としてこの問題が出ていたため、『光の謎』として取り上げられることが多いです)
この『波と粒子の二面性』をあらわす実験として有名なのが『ダブルスリット実験』です。
ダブルスリット実験
この実験は原子核の周りに散らばって電子軌道という雲になっている『電子(量子の代表)』を2つのスリットに向けて発射する実験です。
電子が『粒』であれば『2つの線』ができるはずです。
また『波』であれば『波の模様(干渉縞)』があらわれるはずです。
しかし、実際の結果は
- 見ていない時は波の模様(波)
- 観察をすると2つの線(粒)
つまり、同じ実験をしているはずなのに、『観察しているかどうかによって違う結果が出た』のです。
もちろん、すべてのことに法則がある、という信念を持つ科学者たちは
と考えうる限りの実験を行ってきましたが、やはり『見ていない時は波』なのに『観察すると粒』という現象が起きるのです。
この実験結果から導き出されるのは、量子は古典力学では考えられない、粒と波の性質を同時に持っている(波と粒子の二面性)ということであり、古典力学では解明できない法則が宇宙にあった、ということなのです。
観察しない、という選択を取ることができない
このダブルスリット実験を聞くと
と思ってしまいますよね。
しかし、そもそも機械を置く、置かない以前に『見ようとする』行為自体が実験結果に影響を与えてしまうのです。
私たちの『目で見る』という行為を行うためには自ら光を放つ物体以外は、必ず光を対象物に当てなくてはいけないという問題があり、目に見えないミクロの世界の話になってくると、当てた光のエネルギーによって物質が変化、あるいは動いてしまうため、見る前の状態のまま観察するということができないのです。
それゆえ、世界の科学者たちがどんなに技術を発展させて頑張っても、今のところ『見た』あるいは『観察しようとした時点』で量子は波ではなく『粒』に確定されてしまうのです。
量子論の世界は大きく分けて解釈が三通りある
このような理由から量子力学の世界はまだまだ謎に包まれている世界です。
その中で先ほどのダブルスリット実験を含めた量子の実験結果に対する解釈は、大きく分けて3通りあります。
量子論の解釈
- 隠れた変数の存在
- コペンハーゲン的解釈
- 多世界解釈
隠れた変数
相対性理論を確立した、かの有名なアインシュタインなどは『隠れた変数説』を推しており、この変数を見つけ出すことを目指していました。
アインシュタインは、自然の中に曖昧さはない、というのを
と表現しています。
まだ発見されていないだけで、何かしらの要因があって、量子が波になるか粒になるかを決定している、という考え方ですので、私たちの感覚からしてこの隠れた変数の存在が一番受け入れやすいかもしれません。
しかし、この隠れた変数の存在は『量子エンタングルメント(量子のもつれ)』の発見によって20世紀末には下火の理論になりました。
量子エンタングルメントとは、遠いか近いかに関わらず、一方の粒子に起きることがもう一方の粒子にも影響を与えるという現象です。
量子は片方がAだと確定すれば、その時点でもう片方がBだと確定する、ということが起きます。
たとえどんなに離れていてもです。
これは一光年以上離れた量子の間でも起こるため、アインシュタインの唱える相対性理論(古典物理学)とは相容れない実験結果です。
(相対性理論では、どんなものでも光以上の速さで情報を伝えることはできないとされるが、量子はそれが可能であるという結果が出たため)
この量子エンタングルメントの発見によって、従来の物理学の範囲では考えられないことが起きていることが実証され、これを『不気味(奇妙)な遠隔作用』と呼びます。
こういった新しい実験により、アインシュタインが提唱し、私たちが受け入れやすいであろう『隠れた変数の存在』は下火となったのです。
コペンハーゲン的解釈
そんな中で、量子論の現在主流の考え方は『コペンハーゲン的解釈』と呼ばれる
測定するまで何も確定していない
という解釈です。
だるまさんが転んだを考えていただくとわかりやすいかもしれません。
見ていない間は後ろでそれぞれどんなことをしているかわかりませんが、鬼が振り返るとピタッと一つの形で止まる。
これこそ、量子論のコペンハーゲン的解釈です。
普段、量子は『粒と波の二面性』『重ね合わせの状態(状態の共存)』を持っていますが、私たちが観察をした瞬間、『正解が決まる』のです。
しかし、アインシュタインをはじめとして、このコペンハーゲン的解釈に懐疑的な目を向ける科学者も多かったのが事実です。
アインシュタインは
と語りました。
これは、『測定するまで何も確定していない』とするなら、私たちの誰かが月を『見ている』からこそ、月がそこにあるのであり、『誰も見ていない』という状況下では月は一か所にいるわけではないことになる、という皮肉です。
同じように、コペンハーゲン的解釈に意を唱えるメッセージとして、有名な『シュレーディンガーの猫』の話があります。
- 箱に入っている猫
- 50%の確立で放たれる毒ガス(死の確率が50%)
この二つを基にした思考実験です。
箱を覗くまで、猫の生死はわかりません。
その時、量子論の主流解釈である『コペンハーゲン的解釈』では、「箱を覗かない限り、猫は生きていると同時に死んでもいる」という解釈が成り立ちます。
シュレーディンガーは、
と言わせたくて、この例え話を作りました。
(シュレーディンガーの猫は量子論を説明する有名な仮説ですが、シュレーディンガー自体は方程式を作り出した人物でありながら量子論(コペンハーゲン的解釈)否定派です)
この思考実験に対して、コペンハーゲン的解釈は
という態度をとります。
確率的に、既存の方程式に沿って考えれば、ある程度、生きているか死んでいるかは確定しているのですが、基本的には『確率的』であって、絶対ではなく、それくらい『曖昧』なもの。
これが今の量子論の主流の考え方なのです。
要は天気予報のようなものですね。
明日(未来)が雨かどうかは確率的に示すことはできますが、実際に雨が降るかどうかはその日になってみないとわからない、というような状態です。
ここで、改めてお伝えしておきますが、量子論は哲学的な話ではなく、物理学の話であり、そしてミクロの世界というと私達に関係ないと思ってしまいがちですが、あなたがいじっているスマホも量子論の理論が確立したからこそ存在するものです。
多世界解釈
シュレーディンガーの猫に対して
こう考えた科学者達が、今までの常識を捨てて、量子論が示す世界を『ありのまま』受け取った結果の解釈が『多世界解釈』です。
状態の収束(月は見ているから、そこにある)を考えず、確率的な概念も排除し、古典力学から見ても法則に沿った流れを汲みますが、その代わり『複数の世界が存在する』という前提の解釈です。
- Aを選んだ未来
- Bを選んだ未来
といった形で『未来が枝分かれしていて、どちらの未来もあり得た(他の世界でそれらが実現されている)』という解釈であり、シュレーディンガーの猫の思考実験に対して
- 猫が生きている世界
- 猫が死んでいる世界
二つの世界があり、どちらの世界に進んだ自分もいる、というのが多世界解釈です。
ちなみに、考えることを放棄した科学者たちが酒の肴として推している説などではありません。
多世界解釈は数学的形式の予言する世界です。
エヴェレットという学者が特にこの多世界解釈を推しており、こう説明しています。
これに対し、他の学者が批判をします。
エヴェレットは続けます。
遠い昔、地球は太陽の周りをまわっているのではなく、地球が宇宙の中心で、太陽が地球の周りを回っていると考えられていました(天動説)
しかし実際は地球は宇宙の中心ではなく、グルグル回っていることが発見され、ものの見方は180度変わりました。
それと同じように、今の私たちが常識だと感じていることや、『見えない、感じないから、信じない』と思っているものが、実際の宇宙の法則とは異なっているなんてことはザラにありますし、今までの歴史の中でもそれが証明されてきました。
他の世界が存在するという多世界解釈についても、私たちは別の世界の自分の存在を感じられないから、そんなはずない、と思ってしまいがちですがそうとは言い切れないのです。
また、直感的に
と思ってしまうかもしれませんが、実際は逆です。
現象を素直に受け取り、理屈的に考えると多世界解釈が成り立つにも関わらず、理屈抜きの感覚的嫌悪感から、多世界解釈を受け入れず、実験結果を捻じ曲げて考えているということが起こっているのです。
古典力学も量子力学も重要
もちろん、古典力学が間違っているということではありません。
ですが、古典力学では解明できない問題があり、私たちの常識を超えた先にあるのが量子力学であり、私たちは実際にその恩恵を受けて生活しています。
いうなれば、科学的な正解は未だによくわかっていないものを、とりあえず利用して生きている状態が『現代』であり、私達人類が太古から続けている生活そのものだと言えます。
また、現在は量子力学と古典力学、両方を取り入れた理論の成立に向けての動きもあり、それが『超ひも理論(超弦理論)』です。
超ひも理論とは、世界はひとつのひもでできているという考え方であり、それぞれの振動の違いが性質の違いを生み出しているという考え方です。
そしてこの超ひも理論の考えがたどり着く先には『次元(宇宙)がいくつもある』という量子力学の『多世界解釈』と似た理論があるのです。
科学とスピリチュアルが近づいてきている…?
この量子論の考え方は、コペンハーゲン的解釈にしても多世界解釈にしても、スピリチュアルの考え方ととても似ています。
科学とスピリチュアルは相容れないものと言われがちですが、昨今の研究では瞑想の科学的効果が実証されたり、そもそも遠い昔カバラの叡智で解き明かされていたものを辿っていくと、近年科学的思考として受け入れられたものと似通っています。
そして
- 『古典力学』は『命占』(生年月日を使った占い)
- 『量子力学』は『卜占』(タロットなど偶然の結果に意味があるという考え方)
との類似を感じさせます。
もちろん、科学は科学、スピリチュアルはスピリチュアルです。
しかし、両方の世界を知っていくと、なぜか近い理論が確立されていることが多く、科学もスピリチュアルも結論に辿り着くまでの流れが違うだけで同じものを解き明かそうとしているのではないか、というのが個人的見解です。
目に見えるものや、観測できるものがすべてだったはずの科学が『並行世界があるかもしれない』『すべては決まっていないのかもしれない』という形に収束しかけていること自体が、それを如実にあらわしていると言えるでしょう。
私たちが生きている間にこの謎が解き明かされるかどうかはまだわかりませんが、どちらにせよ、『私たちが知らない世界』あるいは『信じられないことが起こる世界』は確実にあります。
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